電網見聞録

既知との遭遇でしたらすみません

流行り神ポータブルについての感想

 9月のはじめくらいから、のんびりオレは流行り神をプレイしてきた。前回の『死印』のDLCである6章が醸し出すノスタルジックさとホラーの組み合わせにより、今までプレイをしてこなかった“ホラー熱”のようなものが燃えに燃えて、今作に挑戦することになった。昔からアドベンチャーゲームの紙芝居感が苦手……というか、ボタンを押すと技が出るゲームしかしてこなかったのであっさり飽きてしまったらどうしようなどと考えていたが、それも杞憂だった。その理由をゆっくり綴っていこうと思う。

 

 

 まずはじめに、読者諸賢は“FOAF”というものをご存じだろうか?これは『 Friend of a Friend』の略称、つまり友達の友達だ。「友達の友達から聞いた話なんだけど……」なんて話を放課後の教室で話したことのある人もいるかもしれない。物語はそんな本当か嘘か分からない都市伝説を題材にした作品だ。都市伝説を専門に扱う部署“警察史編纂室”が警視庁にあるという。そこに所属する主人公、風海純也として同じ部署の同僚、小暮宗一郎と共に話を進めていく。

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風海純也

 23歳、こう見えて警部補でキャリア組のエリートである。警察でよく言われるキャリアとノンキャリアについては、作品内の“用語集”で細かい解説があるので都市伝説や伝承、科学的な予備知識がゼロでも物語に入れるのがこの作品の良い所である。

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小暮宗一郎

 27歳、主人公より年上であるがノンキャリアの巡査部長なので、主人公の風海の事を先輩と呼ぶ。甘いものが好きで格闘技の有段者、体格も大きく頼りになるが一方で、流血や怪談話が滅法苦手……なのだが、怖い噂話をやたら振ってきたり、オカルトは苦手の割に霊感みたいなものの感度が高かったりで、ヒロインと言っても差し支えないのではないだろうか。一応書いておくが、27歳で巡査部長の役職は異例の大出世といっても間違いないくらい凄いことである。

 

 物語の流れやシステムはアドベンチャー形式のテキストを読んでいく形式だが、途中で選択肢を選ぶ時にカリッジ・ポイントを消費するものがある。このカリッジ・ポイントは章がはじまると持っていて、ポイントを消費しすぎるとその章ではポイントを使った選択が出来なくなるというものだ。

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ご利用は計画的に

 クリア後に評価形式でS~Dを付けられ、次の章が選択できるようになるといった具合である。他にもこのゲームならではのシステムはあるにはあるが、個人的にあまり重要な部分ではないので割愛させていただく。

 感想

 良い点……

  • 選択していくとオカルトルートか科学ルートで解決するが、どちらも完全に解決しないのがホラーならではの手法だと感じた。これは当たり前といえば当たり前なのだが、なんでもかんでも祟りや呪いのせいにしていたら世の中不可解な事件ばかりになるし、超自然的現象だけでは解明できないことも多い。それを踏まえたうえでどう事件と向き合うかと考えさせられる部分が多かった。
  • 事件の登場人物の信条、身上、心情……そういった部分が上手く作られていて、どのキャラも人間味を感じた。愛情や憎しみ、そういった感情の機微を落とし込んでいるせいか、深読みしすぎてしまうこともあったけども。
  • 登場した話や用語についてをまとめた『データベース』がとても充実している。発売されたのがかなり前ということもあって若干今と違う部分もあるだろうが、噂の内容や詳細など読ませる内容が多い。

 微妙な点……

  • 章ごとに既読率があり、何周もしなくてはならないところ。複数も選択肢があるのにわざわざ関係ない選択肢を選ばなければならなかったり、わざと頓珍漢な推理を選択しないとデータベースに用語が追加されなかったりするのだ。一度選んだ選択肢を『済』という印をつけてくれたり、チャートをツリー化したものを表示してくれるシステムもあるのだが、全部選んでも既読率100にならなくて途方に暮れたこともあった。
  • 良い点でオカルトルートと科学ルートを挙げたが、それっぽくないなと感じる話が少しあった。これは好みの問題かもしれないが、これはプレイした人にしか伝わらないものだと思う。

 オレとしては概ね満足して楽しめたけども、中々人を選ぶ作品だなぁと感じた。システム周りや改善してほしいポイントはやはりある。しかし、ホラーゲームというジャンルの中で怖さ以外にもキャラの魅力を引き出す掘り下げに、とても引き込まれた。目まぐるしく情報が溢れる今では、都市伝説みたいなものは広がらないだろう。

 塾帰りに通る信号のない交差点、そこをいつもは直進するのだけど、もし曲がって街灯の少ない道を通ったらその先には何があるのだろう。そんな知らない世界で溢れていたあの頃の、ノスタルジックさを求めてプレイしていたのかもしれない。